市街化調整区域内で住宅を建築しようとする場合は、計画が具体化する前に建築する事が可能か、必ず市役所などに事前に相談することをお勧めします。
なぜなら、都市計画法や農地法などによって市街化調整区域内の住宅建築は制限されているからです。
都市計画法は、秩序ある都市の開発を促すことを目的として定められた法律です。
都市計画法第1条には「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」とあります。
では、なぜ秩序ある開発をする必要があるのでしょうか。
もし、土地所有者や開発者によって土地が無秩序に開発され住宅や店舗などが点在すると、道路・上下水道などの公共インフラの整備の費用に対して効果が限定的になることが理由です。
言い換えれば、都市計画法は、効率的な都市開発を促す法律でもあります。
都市を効率的に開発し人口を集中させれば、費用を抑えつつ、公共サービスが行き届くコンパクトな都市(コンパクトシティ)が完成するのです。
これは行政が最小の経費で最大の効果をあげることとされているためでもあります。
余談ですが、都市というと名古屋などの大都市をイメージしますが、都市計画法の都市には田畑の中に住居が点在するいわゆる田舎も含まれるのです。
農地法は、農地を農地として守り、耕作者の地位を守り、そして食料の安定供給を目的として定められた法律です。
農地法第1条には「農地が限られた資源であり、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、農業生産の増大を図り、食料の安定供給の確保に資することを目的とする。」とあります。
計画的かつ合理的な土地利用を促進するため、農業以外の土地利用計画との調整を図りつつ、優良農地を確保することによって、農業生産力の維持と農業経営の安定を図るため、農地を農地以外にすること(農地転用)を規制しています。
したがって安易に農地転用することはできず、耕作者自身の所有であっても真にやむを得ないものでなければ許可されません。
市街化調整区域内での住宅建築は、都市計画法の許可を得る必要があります。そのため、愛知県知事(指定都市等及び事務処理市は市長)宛に許可申請書を提出して審査を受けなければなりません。
なお、500㎡以上の宅地以外を宅地にする場合、敷地内に道路を新設する場合、基準を超える盛土、切土工事を行う場合などは開発許可(都市計画法第29条)を、500㎡未満の宅地以外を宅地にする場合、かつ、盛土や切土が基準以下であるなど開発許可に該当しない場合は建築許可(都市計画法43条)を得なければなりません。
指定都市等及び事務処理市においては、それぞれ独自に許可等の基準などを定めている場合がありますので各市の建築担当課との十分な事前確認が必要となります。
また、建築予定地が農地(畑や田)の場合は、農地法などの許可などを得る必要があります。
農地について権利を有する者が自己の目的のため転用する場合(農地法第4条)や転用する際に所有権等の権利の移転・設定が伴う場合(農地法第5条)は、市街化区域では農業委員会への届出で済みますが、市街化調整区域では愛知県知事(指定市は市長)による許可が必要となるので許可申請書を提出して審査を受けなければなりません。
市街化調整区域では、開発許可・建築許可と農地転用許可は、同時申請・同時許可となります。
市街化調整区域内で分家住宅を建築しようとする場合は、計画が具体化する前に要件を満たすかどうか必ず事前に市役所などに相談することをお勧めします。
分家住宅とは、世帯の通常の分化発展の過程において、やむを得ない事情により必要とする住宅の確保のための調整区域内における住宅の建築(開発行為又は建築行為)で、許可には様々な要件が必要となります。
調整区域は市街化を抑制すべき区域であるため、新たな建築物を建築することはできませんが、分家住宅は建築が認められる場合があります。
これは、昔から調整区域内の土地に生活の本拠を構えてきた世帯の一員が独立して新しい世帯を構える場合、調整区域内に建築できる農地があれば認められる制度です。
例えば次男世帯が賃貸住宅・アパートで生活しているが子供が生まれるため、将来的なことも考え、本家に近い場所で住宅を建築しようと土地を探したが、条件に合う土地が無く、やむなく親の所有する調整区域内の農地に住宅を建築しようとすることも該当し建築できる可能性があります。
分家住宅は、建築しようとする人と土地所有者の人的要件、そして建築しようとする農地や建築物の物的要件、また他の法律・規則・政令などの法的要件を満たす必要があります。
計画が具体化してから、要件を満たすことができずに泣く泣くあきらめたり、新たな土地を探すことになったりした、という話を聞いたことがあります。
そうならないためにも、必ず事前に市役所などに相談することをお勧めします。
なお、調整区域内の既存宅地については、人的要件を問われませんので、物的要件と法的要件を満たせば、基本的には誰でも住宅建築することができますが、原則として建築許可を得る必要があります。
許可の例外は、農家住宅の建て替えなど適用除外となる建築物を建築する場合で、概要書などの届出が必要となりますので、事前に市役所などに相談されることをお勧めします。
問合せ②
農地は権利取得後3年3作しなければ転用できないと聞きましたが、それ以前にどうしても早期転用しなければならない理由が発生した場合は転用できますか?
お答え②
農地転用は、その理由が真にやむを得ないものでなければ許可されません。
詳しくはQ&Aをご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。